第3章 退職  定年・解雇
  


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 退職、定年、解雇について定めます。解雇は平成16年(2004年)1月より労働基準法が改正され就業規則に書いてある事由でしか解雇が出来なくなりました。又労働者が退職日までに要求した場合には使用者は退職、解雇の理由について記載した書面を労働者に交付しなくてはならなくなりました。
 懲戒解雇の規定については退職(解雇)の章ではなく、後の方の「懲戒」の章で記載します。

第15条(定年

 社員の定年は60歳とする。定年に達した日の属する月の賃金計算日の末日をもって退職とする。
 定年は60歳以上と決まっています。但し定年を定めないことも出来ます。この場合は何歳まででも働くことが出来ます。実際に高年齢者を活用している会社では定年を定めていない所もあります。
 退職日は60歳の誕生日、60歳に誕生日の属する月の末日などが考えられます。しかし給与計算上、60歳になった月の賃金の締切日とするのが一番便利です。

 助成金を受給したい場合は、定年の設定には注意が必要です。定年延長、再雇用制度導入をした際に受給できる助成金は「継続雇用定着促進助成金」です。
 最初から定年を63歳としていたのでは、この助成金は貰えません。60歳の定年だった制度を
就業規則の変更により63歳に定年を延長した等の場合にその延長年数や制度の恩恵を受けた者の人数に応じて受給できます。
 定年を定めていない会社の場合はまず60歳で定年を定めて、1年以上の期間を空けて61歳以上の定年を導入する必要があります。
 このように就業規則の定年の規定の方法ひとつで何十万円〜百万円単位の
お金が貰えるようになります。


第16条(退職事由

 社員が次の各号の一に該当するときは退職とする。
(1)死亡したとき
(2)本人の都合により退職を申し出て会社の承認があったとき。
(3)第10条に定める休職期間が満了してもなお休職の事由が消滅しないとき。
但し会社が復職を認めた場合は除く。
 退職の事由について列挙します。定年については第15条で規定しているので除いています。


第17条(自己都合退職

 社員が自己の都合により退職しようとする場合には少なくとも30日前までに退職の申し出をしなくてはならない。
 退職の申し出は口頭でも有効です。但し後日のトラブルを避けるために「退職願(届)」を提出させるのが無難です。
 申し出の期日も法律では退職日の14日前でよいとされていますが、14日前に退職すると言われて辞められてしまったのでは、業務に支障が出る可能性もあります。リスク回避のためにも30日前までに申し出をさせると規定します。


第18条(解雇

 社員が次の各号の一に該当するときは解雇する。
(1)身体又は精神の障害により職務に耐えられないと認められるとき
(2)技能又は能率が極めて低く、上達又は回復の見込みがほとんどないとき
(3)やむを得ない業務上の都合のとき
(4)試用期間中の者で社員として不適格と認められるとき
(5)休職期間が満了し休職事由が消滅しないとき
(6)懲戒解雇されたとき
(7)天災地変その他やむを得ない事由のために事業の継続が困難となったとき
(8)事業の縮小、設備の変更等により余剰人員を生じたとき
(9)その他前各号に準ずるやむを得ない事由があるとき
 法律の改正により就業規則に記載した事由以外では解雇が出来ないようになりました。考えられる解雇事由はここに列挙しておく必要があります。ここに書いていない事由で解雇して裁判になった場合は負けてしまいます。解雇事由を列挙した最後に「上記各号に準するやむを得ない事由」によっても解雇が行えるように一文を入れてリスクを軽減します。
 但し何でもかんでも使用者の裁量で解雇できる訳ではありません。解雇権の濫用とされて解雇は無効になるので注意が必要です。従業員がより
働きやすい環境を整えることが大切です。


第19条(解雇の予告

 前条により解雇する場合には30日前までに予告するか、又は30日分の平均賃金を
支給して解雇する。この場合において予告の日数は平均賃金を支払った日数分だけ短縮する。
2 懲戒解雇であって管轄労働基準監督署の認定を受けたときは平均賃金を支給しない。
3 試用期間中の社員で入社から14日が経過していない者は平均賃金を支給しない。
 解雇予告手当についての規定です。就業規則に定めた解雇の事由に該当し30日分の平均賃金を支払った場合は解雇ができます。解雇予告手当を支払わずに即時に解雇する場合は労働基準監督署の認定を受ける必要がありますが簡単には認められません。
重大な違反行為や天災などのケースに限られます。
 平均賃金は過去3ヶ月間に支払った賃金の総額を3ヶ月の日数(暦日=出勤日数ではない)で割った金額です。
 平均賃金=過去3ヶ月間に支払った賃金総額/3ヶ月間の日数


第20条(解雇の制限

 社員が業務上の傷病による療養のために休業する期間及びその後30日間、産前産後の休業期間並びにその後30日間は解雇しない。但し業務上の傷病にかかる療養の開始後3年を経過した日において、労働者災害補償保険法に基く傷病補償年金を受けている場合若しくは同日後において同年金を受けることとなった場合はこの限りではない。天災地変等の事由のたに事業の継続が不可能となった場合も同様とする。

 労働基準法の規定に沿っています。業務上のケガや病気により療養をしていて、その開始後3年がたっても療養中で労災保険の傷病補償年金を受けているときは打切り補償を行ったと見なされて解雇することが出来ます。


第21条(退職証明書、解雇理由証明書の交付

 労働者が解雇の予告をされた日から退職の日までの期間に
当該解雇の理由を記載した文書の交付を請求した場合は、使用者は遅滞なくこれを交付する。
 平成16年(2004年)に労働基準法の改正で設けられた大きなポイントの一つです。退職証明書、解雇理由証明書を労働者が請求した場合には退職の日までに書面で交付しなくてはなりません。
 不景気の時代を反映して解雇を巡るトラブルが多発している実情が改正の背景にあります。


第22条(返納義務

 社員が退職したときは身分証明書、健康保険証、名札、記章、制服、その他会社から貸与されているものは直ちに返納しなくてはならない。
2 会社に対する物品購入等の未払金その他債務は直ちに返済しなくてはならない。
 会社から貸与されているものは返納をさせ確実に回収します。健康保険証も必ず回収をして資格喪失の手続きを取ります。


第23条(秘密保持

 社員は退職後においても在職中に知りえた会社の機密や顧客の秘密に関する情報をみだりに第三者に漏らしてはならない。
これにより会社が損害をうけた場合は賠償を請求することがある。
 企業情報の漏洩が大きな社会問題となっています。在職中に知りえた会社の内部情報、顧客データ、取引先の情報についても守秘義務を負わせます。これらを漏らした場合に損害を被ったときは裁判も辞さない覚悟で臨みます。
 退職に際して誓約書をとる企業もあります。法的拘束力がある訳ではありません。一般の社員たった者も含めて全員から誓約書をとることも無理があるので、幹部社員に限るとしてもよいでしょう。
 競業防止規定を入れる場合もあります。退職者が同業他社に転職すること、同じ業種で独立することを制限する規定です。経済的弱者である労働者の生計の道を奪うだけでなく、憲法の職業選択の自由も奪うことにもなりかねないので、一定の期間や幹部社員に限るなどの合理的な範囲に止めるべきです。

第24条(損害賠償

 退職した者に対して、その在職中に行った自己の責任に帰す債務について、会社は損害賠償を請求する権利を放棄するものではありません。
 会社の機器や什器を故意に破損したり、こっそり会社の金品を盗んで退職してしまった場合などのケースを想定して、退職後においても損害賠償を請求することを記載します。




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