第6章 表彰・懲戒


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 懲戒解雇の定義が重要です。職場では表彰よりも懲戒の決まりの方が職場の秩序維持のためにも重きが置かれます。懲戒解雇の規定は「退職・解雇等」の章ではなく、この「懲戒」の章に入れます。
 懲戒は服務規律とも関連してきますから、服務規律の章に記載されている内容と矛盾がないように規定します。


第56条(表彰事項

 次の各号の一に該当するときは審査の上表彰を行う。
(1)業務を誠実に行い社員の模範となる者
(2)業務能率が抜群で著しい成果をあげた者
(3)事業の発展に貢献し又は事業上有益な発明、改良工夫、考案をした者
(4)災害防止に貢献し、又は非常時に功労のあった者
(5)社会的に功績があり、会社の名誉となる行為をした者
(6)永年勤続して成績優秀な者
(7)その他前各号に準ずる功績あげ又は行為をした者
 表彰は頻繁に行われるものではないのですが、社員のやる気を高めるためには必要な制度です。社内表彰は年末の忘年会や決算期末の際に行うことが多いようです。
 発明の対価がついて大きな話題になっています。業務に関連して発明ををして特許を取得した場合は、そのもたらされた利益等に応じて「相当の対価」を支払うことにしているケースが多いと思われます。「発明の対価」とは一体いくらなのか金額があいまいです。数万円のこともあれば数百万円、数千万円という場合もあるでしょう。実用新案や意匠登録などの知的財産権につしいても同じことが言えます。、
 IT関連企業や製造業の会社にとっては特に大きな課題です。


第57条(表彰の種類

 前条における表彰の種類は次の通りとする。
(1)賞状授与
(2)賞品授与
(3)賞金授与
(4)特別昇給
 
第58条(懲戒事項

 社員が次の各号の一に該当する行為を行った場合は懲戒処分を行う。
(1)勤務怠慢又は出勤不良のとき
(2)正当な理由なく遅刻早退、私用外出、無断欠勤等を行い、職場の秩序を乱した者
(3)諸規則、業務上の指示命令に従わず職場の秩序を乱したとき
(4)職務上の権限を超え又はこれらを濫用して自己又は他人の利益を不正に得たとき
(5)会社の秘密を漏らし不利益な行いをしたとき
(6)会社の信用を傷つけ、社員としての体面を失うような行為をしたとき
(7)刑法その他法令に規定する犯罪行為により有罪の判決を受け社員としての体面を損ねたとき
(8)経歴を偽り不正の手段をもっと雇い入れられたとき
(9)会社の承認を得ずに、在籍のまま他に雇用され又は営利を目的とする事業を行ったとき
(10)故意又は過失により会社の業務に支障を与え又は損害を与えたとき
(11)会社の機器、備品什器、商品、資材、原材料などを不正に会社外に持ち出し又は流用したとき
(11)出欠、早退その他勤務に関し虚偽の届出をしたとき
(12)会社又は所属長の許可、承認なく無断で職場を離れたとき又は他人の業務に支障を生じさせたとき
(13)職責を利用して交際を迫ったり、性的な強要をしたとき
(14)相手方の望まない性的な言動により他の社員に不愉快な思いをさせ職場の環境を悪くしたとき
(15)他の社員の業務に支障を与えるような性的な関心を示したり交際や性的関係を強要したとき
(16)前各号に準ずる程度の行為があったとき

2 社員の懲戒に該当する行為につき、幇助、教唆、煽動をおこなったときは本人に準じて懲戒処分を行う。
 ここに示された事由以外では、懲戒処分は出来ません。懲戒解雇も出来ません。 最近社会問題にもなっているケースとして、社員による内部情報漏えいや内部告発、社員の犯罪行為セクハラなどが挙げられます。
 
 内部情報の漏洩は懲戒処分の対象になることを規定して、リスク回避をします。 しかし会社内で不正が行われている場合の内部告発は懲戒処分の対象には出来ません。就業規則といえども法令に違反する部分は無効です。この場合は使用者側が刑事責任を負うことにもなりかねません。
 社員が犯罪行為により逮捕された場合、逮捕されたことだけを理由にした懲戒解雇は無理があります。逮捕された時点では本当に罪を犯しているか分らないからです。事件の内容や捜査状況などを考慮して処分を決める必要があります。
 セクハラについては必ず規定します。古くからある会社の場合は就業規則に記載していないことが多いのですが、セクハラ事件が起きてからでは手遅れです。至急変更をしなくてはなりません。
 何気ない発言が思いもよらないセクハラに発展しかねません。普段の仕事においても注意が必要です。(特に男性)


第59条(懲戒の種類

 懲戒の種類は次の4つとする。
(1)譴責    始末書を提出させて将来を戒める。
(2)減給    始末書を提出させて1回につき平均賃金の一日分の半額を減ずる
但し減額は1ヶ月の給与総額の1/10を限度とする。
(3)出勤停止 7日以内の日数において出勤を停止する。その間の賃金は支給しない
(4)懲戒解雇 予告期間を設けずに即時解雇を行う。但し予告手当を支給しない場合は管轄
労働基準監督署の認可を受ける

2 行為が軽微であり、その他日常の勤務状況等を勘案して情状酌量の余地があるときは、懲戒処分を
行わず、訓戒とする場合がある。但し処分決定まで自宅待機を命ずることがある。

 懲戒を行う場合は慎重に審査をして処分を下します。
 減給は1日について平均賃金の半額まで、1ヶ月の給料については
10%まで、と減額できる額は厳しく制限されています。使用者側の濫用を防ぎ、労働者の生計の道を守るための規定です。
 ある不祥事が起きた企業や役所が新聞、テレビ等で発表する「減給1/10、3ヶ月」という処分は、給料の一割カットを3ヶ月間行うもので、給料(又は役員報酬)の9割は保障されています。
 大幅な減給はできませから、この懲戒処分は社員を戒める性格の強いものです。
 
 懲戒解雇は誤解の多い制度です。懲戒解雇の場合は退職金を支払わなくてよい、と思われているかも知れませんが必ずしもそうではありません。懲戒解雇であっても退職金は支払う必要があります。全額支給でなくとも、全く支給無しという訳にはいかないでしょう。これは退職金は賃金の
後払い説によったものでいす。
 公務員の懲戒免職と懲戒解雇が混同されているようです。公務員の懲戒免職は退職金ゼロ、諭旨免職は退職金有り、と広く知られています。公務員は民間事業所の従業員と異なり失業のリスクがありませんし、税金から給料を貰っているのですから、懲戒免職における退職金ゼロは当然です。公務員と同様の規定をおくのは従業員保護の観点から見ても適切ではないでしょう。
 更に懲戒解雇も使用者が自由にできるのではありません。即時解雇には労働基準監督署の認可が必要です。

 当就業規則サポート部では懲戒解雇においても
退職金は支給されるべきというスタンスをとっているので、諭旨解雇の規定は設けても懲戒解雇の規定とほぼ同じで意味が無いと思われるので入れていません。

 実際に懲戒に該当する事件が起きても情状酌量による訓戒が一番多いのではないでしょうか。訓戒は懲戒処分ではないので、給料や昇進には影響はないと解されています。


第60条(告示

 懲戒処分は原則として事業所内に告示する。必要に応じては処分の内容を取引先、
顧客等の関係者にも通知する。
 懲戒事項に該当する社員の不正により、取引先などに被害が及んだ場合は処分の通知をして社内情報開示の透明性を高め、社外における信用の失墜を最小限にととめます。


第61条(監督不行届

 社員が懲戒処分に処せられたときはその所属長も監督不行届まの理由により懲戒処分にする
ことがある。
 末端の社員だけが、責任をとらされて処分されることがないようにします。トカゲのしっぽ切りの処分では意味がありませんし、社内秩序は乱れます。
 従業員が少ない事業所の場合は上司が使用者、社長であることがほとんどです。必要に応じては使用者自身が自分に処分を下して範を示してもよいでしょう。


第62条(損害賠償

 懲戒に該当する行為により会社に損害を与えたときは、損害賠償の請求又は不当利得返還の請求を行う。
この権利は社員の退職によっても会社が放棄するものではない。
 会社のお金を横領したときは、社内で懲戒処分を下されて、その上「不当利得」として返還を請求されます。損害が発生したときは賠償責任も生じます。更に刑事責任に問われる場合もあります。



 悪いことは分っていても、不正が起きてしおう世の中。個人が悪いのではなく、社会全体の停滞や不透明感がもたらしているいるのかも知れません・・・。




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