賃金規程


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 賃金については就業規則の本則の中に規定してもよいのですが、量も多くなりがちで会社が大きくなるにつれて賃金制度が変わることもあります。賃金制度は会社の業績などにより頻繁に変わることもあります。管理をしやすくすくために別に賃金規程(規則)を作成します。


賃金規程

第1節 賃金の通則

第1条(目的)

 この規程は就業規則第4条にもとづき社員の賃金に関する基準及び手続きを定める。
 就業規則の第4条にて「賃金の規則は別に定める」との規定を受けて賃金規程をここで作成している根拠を示しています。


第2条(原則)

 賃金は職務の内容、勤務成績(個人業績、成果、勤怠状況)、会社業績、及び標準生計費等を
考慮して決める。

第3条(賃金の種類

 賃金には給与、賞与、退職金がある。
 退職金も賃金の一種です。退職金についてはこの規程の最後に「別に定める」と規定しています。


第4条(計算期間及び支払日

 賃金は毎月15日に締め切り25日に支払う。給与計算期間は毎月16日〜翌月15日とする
但し支給日が金融機関の休業日の場合は、順次その前日に繰り上げて支給する。
 賃金締切日は重要です。毎月25日が給料日のことが多いのですが、土日祝日と重なる場合は24日や23日になることがあります。
 毎月、末日払いの場合もあります。1ヶ月が30日のことも31日のこともあります。2月は28日うるう年は29日ありますので、少々ややこしくなります。年末の場合は支給日が数日繰り上がり計算が大変になってしまうことがあります。
 20日締めの25日支給は避けた方が良いでしょう。現金支給ならばまだしも、銀行振り込みの場合は計算が間に合いません。特に毎月20〜24日の間は祝日が入ることが多くなっています。
 給与の締め日と支給日までの日数は10日以上開けるのが賢明です。


第5条(賃金の支払と控除

 原則として賃金は通貨で社員に対して社員に対して直接にその全額を支払う。
但し社員の同意を得た場合は、社員の指定する金融機関の口座に振り込むことにより支給することができる。
2 次の各号ものは賃金支払の際に控除する。
(1)厚生年金保険料
(2)健康保険料
(3)雇用保険料
(4)源泉所得税及び地方税
(5)社員を代表する者との書面協定により控除対象としたもの
 社会保険料や税金は給与から天引きします。これには労使協定は不要です。労使協定を結んで控除するものは、社内積立金、社内旅行積立金、互助会費などです。この協定の労働基準監督署への届出は不要です。


第6条(給与の非常時払い

 社員又は社員が扶養している者に次の各号に掲げるもののいづれかに該当するときは、
第4条の規定にかかわらず給与を支給する。この支払は社員本人又は社員により生計を維持されている者より
請求があった場合に行い、既往の労働に対する額を支給の限度とする。
 労働基準法の規定に沿っています。


第7条(日割り計算方法

 社員が給与計算期間の途中において入社したときの月の給与又は退社した月の給与は日割りにより計算する。
2 日割りによる計算方法は次の通りとする。
  
日割り計算給与=所定内給与 / 20 × 出勤日数

3 出勤日数とは次の日数をいう。
(1)実際に就業した日数
(2)有給休暇の日数
(3)業務上の災害による傷病で欠勤し災害発生日を含む3日間の待機日数
但し欠勤、早退、私用外出の欠勤扱い、により欠勤となった日数は実際に就業した日数より控除する
第8条(休暇・休業の賃金

 年次有給休暇、慶弔休暇は所定労働時間勤務した場合に支払われる通常の賃金を支給する。
2 産前産後の休業、育児・介護休業、生理休暇、育児の日及び時間は無給とする。
 有給休暇ではない休暇、休業期間中の賃金の有無は任意です。


第9条(給与の構成

 社員の給与は所定内給与と所定外給与として次の構成とする。           

給与    所定内給与        基本給 本人給
職務給
諸手当 役職手当
技能手当
調整手当
家族手当
住宅手当
通勤手当
所定外給与 時間外勤務手当       
深夜勤務手当
休日出勤手当

 給与体系です。事業所によっても異なります。更に細かい規定は次の節以降で定めます。
 諸手当は社会的に縮小の傾向にあります。特に不公平とされているのが、家族手当(扶養手当)や住宅手当です。結婚していない、夫婦共働きの場合は扶養手当が支給されなかったり、支給額が少なくなったりします。同じ仕事をしているのに、なぜ?
と疑問の上がっていることも確かです。しかし扶養手当を全廃すると子供のいる労働者の家庭は大打撃を受けます。少子化のこの時代にますます子供のいる家庭を冷遇することになり少子化をさらに進展させてしまう場合もあります。短期的に見れば公正な給与体系と思われますが、長期的に視野に立つと必ずしもよい方法とは言えません。
 賛否両論があるので事業所の実情に合わせるのがよいでしょう。


第2節 基本給 職務給、資格等級を導入する場合

第10条(
基本給の構成

 基本給は本人給と職務給からなる。

 職務給は設けず本人給と区別せずに、併せて基本給とし、社員の年齢、学歴、個人業績、技能等を考慮して支給している企業も数多くあります。この場合は必ずしも毎年一回昇給を行う訳ではなく、社長の一存で決まることが多いです。
(企業により本人給、職務給の呼称は異なります)


第11条(本人給

 本人給は年齢別の生計費等を参考に設定して支給する。
 本人給は主に社員本人の年齢等を考慮して決定します。

職務給は設けず本人給と区別せずに、併せて基本給とし、社員の年齢、学歴、個人業績、技能等を考慮して支給している企業も数多くあります。この場合は必ずしも毎年一回昇給を行う訳ではなく、
社長の一存で決まることが多いです。
(企業により本人給、職務給の呼称は異なります)

 
第12条(本人給昇給

 本人給は毎年4月に本人給表に基き昇給を実施する。
但し会社の業績に著しい低下その他やむを得ない事由がある場合は
この限りではない。
 本人給表を設定すると毎年1人につき数千円づつ程度の昇給が発生します。経営環境の厳しい場合はきついかも知れません。

第13条(職務給

 職務給は職務の内容に応じて資格、級を定め資格別、級別に仕事の成果・実行度に
応じて決定する。
 職務給は社内で資格等級を定め、仕事(職務)の達成度等を評価して決定します。職務に応じた社内における資格等級を定めて処遇を決定している企業も多くあります。
 
 職務給は設けず本人給と区別せずに、併せて
基本給とし、社員の年齢、学歴、個人業績、技能等を考慮して支給している企業も数多くあります。この場合は必ずしも毎年一回昇給を行う訳ではなく、社長の一存で決まることが多いです。
(企業により本人給、職務給の呼称は異なります)


第14条(職務給の昇給、昇給)

 昇格は別に定める昇格基準に従い行う。その際の昇格昇給は毎年4月に行う。
但し会社の業績に著しい低下その他やむを得ない事由がある場合は
この限りではない。
 社内の資格等級が上がった場合は昇格と共に職務級が上がり(昇給)ます。昇格の際には一定期間の年数、同一資格等級を経験し、人事考課の結果により昇格するか否かを決めます。
 あくまで社内における等級が上がるのみで、課長、係長などの役職につくかは別問題です。昇格して更に役職についた場合は後紀の通り、役職手当を支給します。
 

第15条(職務給の資格内昇給)

昇格を伴わない資格内における昇給は人事考課により毎年4月に行う。
但し会社の業績に著しい低下その他やむを得ない事由がある場合は
この限りではない。
 資格等級が上がらない場合は、人事考課の評価により昇級するか決まります。(A〜Eの5段階評価など)
前年より評価が下がれば給料は下がります。
 社内資格制度を設ける場合は人事考課について基準を定めて、公平な評価をする必要があります。


第16条(採用者の資格、級、基本給)

 定期採用者又はこれに準ずる者の資格と基本給は別途定める。
2 中途採用者の資格、級及び基本給は求められる職務の内容、年齢、技能等に
より総合的に決定します。
 新規採用者の等級を定める必要があります。

 
第17条(臨時昇給)

 勤務成績が特に優秀で最近の勤務成績により特に昇給の必要がある場合は
臨時に昇給を行うことがある。
 毎年4月と昇給時期を決めていますが、成績優秀者には特別に昇給できる道を開いておき、社員のやる気を刺激します。


第3節 諸手当

第18条(
役職手当

 役職手当は次表の区分により支給する。

役職手当      月 額    
部長    60,000円
課長 35,000円
係長 10,000円
主任 3,000円

 各種手当について定めます。手当は事業所により必要なものを定めます。
 ここで掲げていない諸手当では、宿直手当、日直手当、単身赴任手当、出向手当等があります。


第19条(技能手当

技能手当は業務内容の特殊性を考慮すべき次の各号に該当する者に支給する。

(1)技能に関する免許又は資格を有しなければ従事できない業務に従事している社員
(2)技能に関する免許又は資格を会社が使用し、それに伴い業務又は責任が課せられている
社員
(3)特別な技能を必要とする業務に従事している社員

2 技能手当の支給基準及び支給額は別に定める
 技能手当は業務の遂行にに資格が必要な場合に支給されます。但し運転免許は入りません。原則として、ただ資格を持っているだけではダメで、実際に業務に役立てている場合や名義を登録している場合に支給します。(もちろん所持者に支給する規定を定めることも出来ます。)
主な資格を挙げると

資格の例 金額の例
電気主任技術者 6,000円
危険物取扱主任者 3,000円
宅地建物取引主任者 5,000円
衛生管理者 2,000円
情報処理技術者 5,000円〜30,000円
薬剤師 35,000円
看護師(所持者) 10,000円
保健師(所持者) 15,000円

第20条(調整手当

 調整手当は従来の賃金を保障しなければならない場合又は会社が必要と認めた社員に支給する。
 調整手当は臨機応変に利用することができます。給与体系を変更した場合に賃金が下がることを防ぐためや、社内の事情で本来支給すべき給与を支給できない場合の代替措置として支給をします。


第21条(家族手当

 家族手当は税法上の扶養親族を有する場合に支給する。
支給対象者と毎月の金額は次表の通りとする。

 対象者  月額
配偶者 12,000円
満18歳年度末までの子2名まで 1名につき6,000円
満18歳年度末までの子3名以上 1名につき3,000円
 家族手当の支給は縮小傾向にあります。独身者や共働きの場合は不利だからです。給料の額は家族の扶養有無ではなく、仕事の内容によって決めるという社会的な流れです。
 支給する場合でも共働きの家庭に配慮して配偶者(夫又は子)には支給せず、子がいる場合のみに支給するケースもあります。子を支給対象にしても子の年齢の上限を設けたり、第3子まで等、支給対象の子の数を制限するケースもあります。
 安易に制度を変更すれば問題点も多々出てきます。共働き世帯は増加(主に女性の職場進出が進む)しても、少子化社会をますます促進してしまうことにもなります。そのために保育施設の充実といっても簡単にはいきません。

 扶養家族の判断は
年収103万円という大きな壁があります。この額を超えると扶養家族とされず、家族手当の支給対象にはなりません。これは税金での区分で、社会保険(健康保険、厚生年金)の扶養家族の基準ではありません。社会保険の年収の基準額は原則130万円です。但し障害者、老年者等は180万円とされています。

 扶養親族に60歳又は65歳以上の年齢の下限を設けて親も対象にすることもあります。60歳又は65歳以上でも年金を受給している人が多いので、年金受給額が扶養基準額の範囲内ならば家族手当の支給の対象になります。
 通常、家族手当の支給対象は配偶者(夫又は妻)と子に限り、親を扶養する場合でも支給しません。


第22条(住宅手当

 賃貸住宅に居住する社員は家賃の額に応じて住宅手当を支給する。
但し世帯主として住民登録している場合で所定の申請書により本人が申請を行った場合に限る。

2 家賃の額に駐車場の賃借料は含まない。但し家賃に含まれている場合はこの限りではない。
2 住宅手当は賃金締切日までに申請のあったときは当月の給与より支給する。

家賃の月額 月額
50,000円未満 20,000円
50,000円〜75,000円未満 30,000円
75,000円〜100,000円未満 40,000円
100,000円〜125,000円未満 50,000円
125,000円〜150,000円未満 60,000円
150,000円以上 70,000円

 住宅手当は、マンション、アパートを賃貸している社員に支給します。マイホームを購入してローンを払っている場合は除くのが対象外なのがです。
 支給対象者も共働き家庭に対する二重払いを防ぐために世帯主に限っています。夫と妻がそれぞれの会社から支給されることが無いように規定します。


第23条(通勤手当

 公共交通機関を利用して通勤する社員にはその実費(1ヶ月の定期券代相当額)を支給する。
但し月額50,000万円を上限とする。
2 定期券を紛失・盗難した場合は自己負担とする。

 通勤手当も含めて各種手当は賃金の一部とされます。諸手当にも社会保険料もかかります。つまり遠くから通勤している人は多く厚生年金保険料や健康保険料を支払う必要があります。
 但し通勤手当には一定額(月10万円)まで所得税はかかりません。上記条文では余裕をもって非課税扱いです。ここが住宅手当や他の諸手当と異なる点です。
通勤手当はほとんどの場合、非課税です。

第24条(自家用車通勤手当

 自家用車による通勤をする場合は次表に掲げる額を通勤手当として毎月支給する。
但し自転車で通勤をする場合、実際の片道の通勤距離が2km以内の場合は支給しない。

片道の実距離  月額 
 2q以上10q未満 5,000円
10q以上20q未満 7,500円
20q以上30q未満 10,000円
30q以上40q未満 15,000円
50q以上60q未満 20,000円
60q以上 25,000円
 マイカー通勤の場合は交通事情や天候により遅刻する場合があります。通勤途中の事故による補償の発生も可能性は高くなります。支給額はガソリン代というとになるのですが、マイカー通勤の場合は私用も一緒になるので電車通勤よりも低く設定します。


第4節 割増手当

第25条(
割増手当の計算

 所定外時間、所定の休日及び深夜に労働させた場合には割増手当を支給する。
2 割増手当計算における算定の基礎となる額は以下の額とする。

割増手当算定基礎額 = 基本給+役職手当+技能手当

3 割増手当は15分単位で計算して支給する。15分未満は切り捨てる。
 割増手当の計算の基礎には家族手当、住宅手当、通勤手当は入れません。算定基礎額を時間給に換算して割増手当を加算します。


第26条(時間外手当

 時間外手当は業務上の命令に基いて所定時間外に労働又は所定の休日に労働したときに支給する。
時間外手当の就業1時間当りの額は次の通りとする。

割増手当算定基礎額/162×1.25
 時間外労働の際の賃金の割増率は1.25倍です。(労働基準法で決められている最低の割増率)1ヶ月の平均労働時間を162時間として、1時間当りの割増賃金を計算しています。


第27条(深夜勤務手当

 深夜勤務手当は午後10時より午前5時までの間に就業したときに支給する。
深夜勤務手当の就業1時間当りの額は次の通りとする。

割増手当算定基礎額/162×1.35

2 時間外手当の支給される時間が深夜手当の支給対象となる時間に及ぶときは時間外手当と
深夜勤務手当の両方を支給する。この場合の就業1時間当りの額は次の通りとなる。


割増手当算定基礎額/162×1.60
 深夜勤務の場合の割増率は1.35倍です。(労働基準法で決められている最低の割増率)
残業(時間外労働)が深夜に及んだ場合は0.25+0.35=0.60で、最低でも1.6倍の割増賃金を支払わなくてはなりません。


第28条(休日出勤手当

 休日出勤手当は会社の所定休日に労働したときに支給する。

休日出勤手当の就業1時間当りの額は次の通りとする。

割増手当算定基礎額/162×1.25


2 休日出勤手当は他の日に休日を振り替えたときは支給しない。
 休日出勤の場合の残業(時間外労働)の場合と同じで、割増率は1.25倍です。休日労働で残業となった場合は1.5倍、更に休日出勤の残業が深夜に及んだ場合は1.85倍の割増賃金を支払う必要があります。

第5節 賞与

第29条(
賞与の原則

 賞与は会社の業績及び勤務成績に応じて毎年2回、夏期及び年末に支給する。
但し会社の業績の著しい低下又はその他やむを得ない理由があるときは支給しないことがある。
 賞与(ボーナス)は会社の業績、個人の実績等によって決定します。不景気ですから、ボーナスが無い会社も数多くあります。

第30条(賞与の支給

 賞与は賞与の支給日当日に在籍をしている社員に支給する。
賞与の支給日、支給額、支給条件はその都度定める。
2 賞与の支給対象となる勤務成績の評価は以下の期間に対して行う。
夏期賞与・・・前年10月16日〜当年4月15日
年末賞与・・・当年4月16日〜当年10月15日
3 評価期間の途中で採用された社員の賞与は別に定める基準で支給する。
 ボーナスは7月と12月に支払うことが多いのですが、支給日を賃金規程等で決めてしまうと資金繰りの状況によっては支給日に間に合わないことがあります。支給日は大体毎年7月10日、12月10日と決まっていますが、支給するごとに事前に社員に通知する方が無難です。

 ボーナスは各半期ごとの業績の評価により支給するのが通例です。公務員のボーナスである勤勉手当とは性格が異なります。


第6節 退職金

第31条(退職金の支給)

 社員が退職した場合又は解雇された場合は退職金を支給する。
退職金の支給基準は別に定める。
 退職金は賃金の項で規定するには量が多いので、別に退職金規程で定めています。


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